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zoom RSS コラム「科学技術創造立国を再確認せよ」

<<   作成日時 : 2010/12/27 10:39   >>

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イノベーションの潮流に遅れる日本
 「イノベーション」という名のモンスターが徘徊するグローバル環境下で、米国、中国、韓国などは科学技術予算を増加させている。科学技術は経済成長の原動力であるばかりでなく、エネルギー不足、環境汚染などの問題解決に寄与し、軍事にも応用できるため、各国が重点をおくのは当然と考えられている。モンスターの力を獲得しようと、科学技術への積極的な予算の投入と研究開発を巡る激しい競争が繰り広げられているのだ。
 しかし、日本の科学技術予算は減少し、海外から奇異な目で見られている。日本政府はイノベーションを重視していないのかと疑われているのだ。
中国科学技術省の副大臣は、日本が5年後までに政府支出の研究開発費をGDPの0.8%から1%に増加させるという計画を聞いて、目標がそんなに低いのかと驚きの声をあげている。毎年20%も研究費を増加させている中国政府からみると信じ難い数字なのだろう。
また、低炭素社会に貢献するとして原子力発電が見直され、「原子力ルネッサンス」と脚光を浴びているが、原子力研究開発をみるとアメリカは競争的な基礎研究費を段階的に増加させているが、日本ではこの五年で半分まで大幅に減少している。
 昨年、政権交代が実現し、鳩山総理と菅総理の理工系リーダーの登場はサイエンスコミュニティーに大きな期待を抱かせたが、事業仕分け作業で厳しい予算縮減が打ち出され、失望感が広がった。自民党政権時代、科学技術振興特別枠が設置されていたのを懐かしむ声も聞かれる。

地方国立大学は危機的状況
 国立大学の運営費交付金が毎年1%削減され続け、地方国立大学では経営が成り立たないと悲鳴が上げられるようになっている。教授の定年延長に伴い若手研究者のポストが減少するばかりでなく、ポスドク(博士研究員)数の増加と厳しい処遇は学生にも悪影響を及ぼし、理工系博士課程に進学する学生が減少傾向にある。受験競争の勝ち組であっても、将来が不安定では社会の負け組に分類されかねない。日本政府のポスドク1万人計画はポスドク過剰に陥り、思わぬ結果を招いたのだ。
 ポスドク制はそもそも科学先進国のアメリカの制度を取り入れたものだが、日本でも中国でも定着しにくい状況をみると、日本社会に合った制度改革を行う必要があるかもしれない。科学は普遍的であっても、科学制度の導入には文化を考慮すべきなのだろう。
 また、世界の大学の大学院生はリサーチアシスタントなどとして処遇し、労働の対価が支払われているが、日本の大学では教育という名のもとにほとんどがタダ働きの状態である。国内外の優秀な若手人材を科学界に惹きつけようとするのであれば、海外と同じような処遇制度を導入すべきである。
 大学への運営費交付金の増額が強く求められる所以である。

競争的研究資金の充実と多様化を
 研究には「選択と集中」が重要だともてはやされて競争的研究資金事業が乱立した結果、事業仕分けで、ボトムアップ型の科研費とは別立てで、トップダウン型事業は一つに統合すべきとされた。しかし、極端に整理統合するのは、研究資金のリソースの多様性を狭め、優れた基礎研究の芽を摘む恐れがある。トップダウン型の競争的研究資金も研究課題の選考はピアレビュー(研究者仲間の評価)によってなされるが、リソースが少ないと画期的なアイデアを拾う可能性が少なくなるからだ。
 また、研究には評価が重要なことは言を待たないが、研究現場では評価が多すぎるため、いわゆる評価疲れが深刻になっている。研究費の伸びが期待できないのであれば、評価に元気が出ないのは当然である。

科学技術創造立国の再確認を
 イノベーションの創出は、官民一体となって取り組める体制を作りあげる必要がある。中国や韓国では電気自動車の電池など基幹技術を国家主導で実施していることを考えると、
日本では大学や研究開発独立行政法人が民間企業と協力してイノベーション創出のロードマップを作成し着実に実行すべきである。
 官民を合わせた2009年度の研究費総額は、民間企業の研究費が前年度比で11%減の大幅な落ち込みのため、8.3%減となった。民間企業の技術力が「底抜け」してしまう恐れがある現在、政府は将来の富を生み出す科学技術に予算を重点配分する姿勢を明確に打ち出すべきである。予算が増えれば、科学技術の世界で活躍しようと志す若者や子供も多くなるはずである。
 政府は科学技術創造立国の旗を再び高く掲げるべきである。(2010年12月23日)

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