安倍晋三元総理はカムバックするか

 6月24日、市ヶ谷(防衛省ではない)で安倍晋三元総理の元気いっぱいの講演会を最前列で聞いてきたので、再現してみる。

 みなさま、こんにちわ。安倍でございます。本日お招きいただいたCEOの△△さんは安倍政権の若手の官邸官僚の一人でした。竹中大臣のアドバイスで官邸で働く官僚の公募を行ったところ、当時公務員制度改革を行おうとしていたため、大多数は出身官庁のひも付きで来ていたのですが、△△さんは自分の意志で官邸にやってきて安部政権のために働いてくれました。その後、△△さんは霞ヶ関を飛び出して行きました。出身官庁の方を見て仕事をやらずに、気まずくなり、辞めていった官僚も3、4名いたと思います。

 わたしは保守派の政治家です。我が国が守るべき伝統、文化、自然のような大切なものは改革なしには守れないというのがわたしの立場です。

 民主党政権は3年になりますが、先日三党合意に達し、消費税率を2年後に上げようとしています。しかし、その前にやるべきことはたくさんあります。累積赤字900兆円をどう処理するかは我が国の重大な課題です。無駄な支出は省かなければならない。税収も増やさなければならない。成長路線もとらなければならない。

 安倍政権のとき、税収は51兆円で、GDPは513兆円でした。21世紀になって最大のGDPです。わたしが総理になったとき、日銀総裁は量的緩和を止めてしまったのです。中川幹事長は日銀に政治圧力をかけて、買いオペをやらせ、120円まで円安が進み、株価も18,200円まで高騰しました。デパートの売上高も随分改善しました。国債発行は25兆円に抑え、2007年のプライマリーバランスは4兆円の赤字まで縮小させたのです。デフレ脱却と成長路線で22兆円も改善したのです。あれが継続されていれば、財政事情は随分よくなったはずです。

 消費税率アップは10%まで仕方がないかもしれません。しかし、その前にやるべきことがある。日銀法を改正して、日銀に雇用確保とインフラ目標2~3%の実行の責任を負わせるべきです。金融緩和で日本経済を成長路線に乗せるのです。昨年、日本のGDPは中国に抜かれましたが、もしこの20年間名目成長率が3%で続いていたら、現在でも日本のGDPは中国の2倍はあるのです。

 政治家と運転手の関係はタクシーの乗客と運転手の関係に似ている。菅総理のように下手な技術を持っている人が運転席に座って、自ら運転しようとするから事故を起こしてしまうのです。政治家は目的地、つまりゴールを指示する人であり、官僚は運転手のようにゴールに生きための手法、すなわち政策を打ち出せる人でなければなりません。

 民主党政権はすべて政務三役で決定するので、役人には何の裁量権もなく、三役に従えと言った。これが失政だった。3.11災害対応で、役人は5~6割の力しか発揮できなかった。神戸・阪神大震災のときには小里さんがリーダーシップを発揮してくれた。例えば、山口県の水産高校の船は規則上訓練にしか使えないが、緊急時ということで例外的に救援にも使ったのだ。

 成長戦略を作る上でも、政治家は大きな方向性を決めて、役人にアイデアを出させればいい。
 世界一速いスパコン「京」を神戸に作ろうと決めたのは安部政権であった。京はアルツハイマー病などの薬品の開発に役に立つツールだ。日本が最初に開発すれば、日本の経済を活性化させられる。

 民主党の「事業仕分け」は国民に受けたが、小さい点にばかり目が行ったのは問題だった。安部政権で5億円の予算をつけた「はやぶさ」は事業仕分けで、3,000万円まで削減された。米国では宇宙開発への投資が数十兆円の富を産んだのだ。政治家は広い視点で考えなければいけない。

 農業も成長戦略にすることができる。食料自給率が低い国は輸出を振興することで、自給率も上げられるのだ。英国もドイツも輸出が数十倍に膨らんだ。当時の松岡農林大臣はわたしの執務室にやってきて、このままでは日本の農業はじり貧だ。それから脱却するために、輸出1兆円を目標に掲げるべきだというので、そのとおりにした。
 中国の温家宝総理の奥さんは日本にやってくると、日本橋の三越デパートの世界で一番高いコメを買って帰る。その情報を得たわたしが小泉総理に伝えると、「日本のコメは日本の炊飯器で炊かなければならない」と言うので、わたしは奥さんに炊飯器10台をプレゼントした。奥さんは喜んでくれたにちがいないと思う。

 日本ではコメ1俵が1.2万円だが、中国のセリでは一流のコシヒカリが7.9万円の価格がついた。中国へのコメ輸出を果たしたのである。
 日本の農業や漁業に若い人が喜んで行くようにならないといけない。農業は安全保障の面から保護すべき面があるが、成長の大きな可能性を秘めているのである。

 負債への対応の前に、デフレ脱却、成長戦略、無駄の削減がなければならない。

 日本の外交・安全保障の要諦は中国とどう付き合うかだ。世界の脅威はイスラム原理主義と中国の二つの勢力と言われるようになった。中国は共産党支配の国であるが、国民を牽引するために二つの戦略で動いている。一つ目は国民に豊かさを提供できる高度経済成長であり、二つ目は海外から尊敬される愛国主義だ。愛国主義は反日教育と裏腹の関係にある。
 高度経済成長には東シナ海のエネルギー確保が必要であり、中国首脳は尖閣諸島を「核心的利益」と最近呼ぶようになった。核心的利益とは、国家体制、国土領土、持続的経済発展にかかわるもので、譲歩してはならないものだ。ウイグル、チベット、台湾、尖閣の四つを核心的利益と呼ぶようになっている。

 中国は改革開放政策をはじめたときから、愛国主義=反日教育をやっている。話せばわかるというものではない。
 わたしは総理就任後、最初に訪問した国は中国だった。それまでの「友好第一」から「戦略的互恵関係」に格上げした。日中関係は切っても切れない関係であることを、お互いが認識することが重要だ。戦略的互恵関係というクールで安定した関係をコントロールすることが大切なんです。そのように中国の首脳にも話した。

 これからの日中関係はどうなるか。中国はベトナム、ソ連、フィリピンからドサクサにまぎれて領土をかすめ取っている。エネルギーが必要と言うのであれば、日中が協力して東シナ海で油田開発をしればいいじゃないですか。
 一方で、中国に尖閣諸島を諦めさせることも重要です。上陸した中国人を追い出すには負傷者がでる事態になるので、彼らを上陸させてはいけない。
 クリントン国務長官が尖閣諸島は日本のものと言ったら、中国は会談のテーブルに着いてきた。そういうものです。日本は米国との信頼関係が大切です。わたしが訪米した際に、旧友のアーミテージ副長官に会った際、同行した議員が率直に聞いた。
「中国軍が尖閣諸島に上陸したら、米国軍は尖閣を守るために出動しますか」
 かれは明確に答えました。
「まずは日本人が命を賭けて島を守るべきだ。そうしないと米国の若者を尖閣のために死なせるわけにはいかない」

 自由民主党の結党の目標は、国民を豊かにすることと憲法改正だった。7年の占領軍のときに作られた憲法は刷新すべきです。戦後体制を変えなければならない時期です。

 わたしが大学を卒業した1977年に大きな事件が起こった。当時は福田政権の時代だった。
 7月、日本赤軍派がダッカでハイジャックしたとき、日本政府はテロリストの要求に屈し、超法規的措置により拘束していた仲間を解放し、世界から非難を受けた。2ヶ月後、ドイツで似たような事件が起こると、シュミット政権は秘密警察を飛行機に突入させて、テロリストを全員射殺した。世界はドイツ政府を称賛したのだった。

 同年9月、日本の警察は国内で拉致活動を行っていた北朝鮮工作員キムホセを逮捕したが、取り扱いに困り、あろうことか「憲法前文の平和を愛する諸国民の信義に則り」という解釈で釈放してしまった。そして、2ヶ月後の11月、当時13歳のあの横田めぐみさんが北朝鮮工作員に拉致されたのだった。もし、キムホセを保釈せずに、北朝鮮に対して非難のメッセージを発していれば、横田めぐみさんは拉致されなかったかもしれない。

 憲法を変えるべきです。まず、改定条件の96条を変える。衆参両院の国会議員の三分の二条件を二分の一に緩和すべきだ。新聞の調査でも憲法改正容認派は多数を占めるようになった。
 日本の豊かさと美しい大地と伝統を守るためにも経済力がないとだめだ。
 3.11大震災の経験を通じて守るべきものが明らかになった。避難放送マイクを握ったまま死んでいった人もいる。被曝を恐れずに、原発事故の収束に建屋に飛び込んでいった人もいる。戦後の日本は価値の基準を損得においてきたし、そのように教えてきた先生もいるが、彼らは自分の命を賭けて守るべきものを守ろうとしたのだ。

 天皇陛下夫妻が瓦礫の山に向かって頭を深く下げられる際、多くの被災者の人々の心が癒された。天皇陛下だからできるんです。長い歴史を背負ってこられた天皇だから可能なんです。
 時間が参りましたので、わたしの話を終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。

(質疑応答)
1.(議論よりの実行だというコメントに対し)安部政権では、教育基本法改正、国民選挙法の制定、防衛省の昇格、国家公務員制度改を行いました。やるべきことは分かっています。自民党はやるべきことはやります。そのためには権力を握らなければならない。

2.(憲法改正の戦略を教えて欲しいという質問に対して)今年中に総選挙が行われるかもしれないが、来年夏の参議院選挙に合わせて、憲法改正を争点にして衆参ダブル選挙をやればいいと思う。憲法改正を訴える議員が三分の二を超えたら、憲法を変えればいい。ただ、これはわが党の戦略なので口外しないでもらいたい。(笑)

3.(政治家にもっとも必要な資質は何かという質問に対して)決断力と説得力だ。安部政権の国家公務員制度改革のとき、役所出身の閣僚が「天下りをなくすと優秀な人材来なくなる」と反対した。そこで、わたしは「大学卒業したばかりの学生が官僚になるとき、天下りを目標に役所に入ってきたか。そんな人材は不要だ」と言ったら、みんな黙り込んでしまった。これは大きな説得力だった。

4.(教育問題で変えるべきことは何かという質問に対して)初中等教育では基礎学力の回復と日本人としての基礎をつくるのだ重要。安部政権では日教組が反対したが、学習能力テストを実施した。民主党政権になると再び止めてしまった。テストが悪い学校はいい学校から手法を学べばいいんだ。広島の尾道の小学校は、早寝、早起き、朝ごはん、反復練習のキャンペーンをやったところ、日本のトップクラスの学校になった。このような運動を全国に広めていけばよい。
 高等教育では徹底した国際化が必要だ、海外に開かれた大学にしていかなければならない。

5.(日本の閉塞感を打破する方法の質問に対して)みんなができないと思っていることをやってみせるのが重要だ。憲法改正はできないと思われているので、閉塞感打破にはもっともよい手段だ。(2012年6月24日、寺岡伸章)



 

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