大阪維新の会の研究(13)

 大阪維新の会は「維新八策」で革命的な提案を行っている割には、八つの柱の一つである「外交・安全保障」については注目すべき提案を行っていない。日米同盟に加えて、韓国や豪州も含めた太平洋の安全保障体制を強化するとしている程度である。
 大阪維新の会の外交・安全保障のブレーンの一人は元東大教授の北岡伸一氏であるが、日米同盟強化による中国包囲網の形成、集団的自衛権の合憲化、武器輸出三原則の見直し、安全保障会議の内閣設置などリアリズムの戦略を採用するとみられる。日本の守るべき価値観は中国とは相容れず、米国と近いという発想からきている。
 橋下徹代表は外交・安全保障問題は複雑で危うい問題であるので安易にコミットしない方がいいと思っているのだろう。嗅覚は鋭い。鳩山元総理が政権を奪取すると、普天間移設問題をぶり返して、日米同盟を動揺させ、中国とロシアの領土問題の覚醒を惹き起こした教訓を橋下代表はよく学んでいる。鳩山氏はまだ事の本質が分からずに、失敗を繰り返している。
 橋下代表が政権奪取を本気で考えるのであれば、外交・安全保障問題は慎重にも慎重を重ねて対処しなければならない。極東地域の不安定化は紛争の勃発だけでなく、邦人企業の海外駐在員の安全確保や救出作戦にも及ぶことに思いを致すべきである。もちろん、だからといって、媚中外交を継続すれば、米国の信頼を失い、中国にもバカにされることになろう。米国との関係を重視しつつ、独自の外交の展開も必要なのだ。刻刻変わる国際情勢の変化に対して的確に対応していかなければならない。

 総理大臣になった立場で発想すれば分かりやすい。日本の領土と国民の生命と財産を守ることは総理の責務である。日本の安全が米国によって守られていることは否定しようがない。日本は戦後一貫して安全保障よりも経済成長をひたすら目指してきたのだから、そのつけは払い続けなければならない。日本は若者を戦場で死なせるという選択を避けてきたのだった。そう考えると、米国が日本の領土を守るために、米国が若者の命をかけるとは思えない。米国の核の傘を認識しつつも、日本の領土は日本人が守るという気概を示すことが必要なのだ。
 橋下代表は憲法第9条が領土を守るという意識だけでなく、日本人から自立心を奪ったと言明している。彼らしいレトリックだが、財政破綻しつつあるが問題解決に本気で取り組まない政治家と国民を批判し、憲法改正の道筋をつけて、日本人に自立心を呼び覚まそうとしているものと思われる。

 大阪維新の会は脱原発依存を鮮明にしていくものと思われる。一方、連携が噂されている石原都知事は脱原発には反対の立場だ。なぜか。原子力は一気にそのエネルギーを放出すれば核兵器になり、ゆっくり放出すれば発電所になるという特徴がある。脱原発依存の議論はエネルギー源としての原発を減少させていくのか、それとも核武装の基礎となる技術を維持して潜在的核抑止力を持ち続けようとするのかの安全保障問題でもある。技術的には、原発を止めてもプルトニウムを抽出する再処理技術を持ち続ければ核兵器の開発は可能である。しかし、脱原発は再処理継続の大義名分を失い、再処理技術の低下につながる恐れがある。石原都知事は安全保障問題にリンクすることをよく理解しているために、脱原発を言わない。
 一方、大阪維新の会が既得権益集団でなく「ふわっとした民意」を大切にするのであれば、脱原発依存に向かわざるを得ないであろう。その時、大阪維新の会の安全保障戦略が厳しく問われることになる。民意にだけ耳を傾けていては、国を守ることはできない場合があるのだ。そこが為政者の辛いところである。
 原子力基本法に「安全保障に資する」という文言が入れたのは保守勢力であると思われるが、国を守る手段として核武装も選択肢の一つとして確保しておきたいという隠された意図は否定しようがない。政府の正式な表明は「安全保障とはエネルギー安全保障であり、核セキュリティ対策である」と言うが、表面どおり解釈する国は少ないだろう。それほど外交・安全保障の問題は厳しい。もちろん、潜在的核抑止力の妥当性をあまり国内で議論してはいけない。相手国に勝手に想像させることが要諦なのだ。

 1970年に日本は核不拡散条約(NPT)に署名しているが、批准したのは6年後である。日本の安全保障のあり方を巡り6年間の長期に亘り、政治の場で激しい議論が行われたのだった。日本がNPT条約から脱退するのはあり得ない選択であるが、今後も安全保障をいかにして確保していくかは著しく政治的な課題だ。
 大阪維新の会の唱える脱原発依存と安全保障確保の関係が問われるのだ。次の総選挙後の政権は保守系連立になると予想するが、その政権に大阪維新の会が加わるかどうかは安全保障で折り合いを付けられるかどうかである。脱原発依存の議論の根は深い。(2012年7月1日、寺岡伸章)

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