日本人を目覚めさせた中国政府

 自信がない者ほど他人に威張り散らそうとする。これは個人も国家も同じである。
 漁船衝突問題を巡る中国政府の強硬姿勢に日本政府も日本国民も驚きを隠そうとしない。日本政府の船長逮捕に対する謝罪と賠償の請求に加えて、政府要人の訪日延期、訪日観光の自粛、フジタ社員の拘束、レアメタルの禁輸措置、通関の厳格化など相次いで要求がエスカレートしている。中国はいったいなぜそこまで強硬なのだろうか。中国国内では尖閣諸島(中国名は釣魚島)は中国固有の領土と説明されているため、中国国民は船長を逮捕した日本政府は理不尽であると信じ込んでいる。北京駐在員にはタクシーの運転手や中国人の友人からかつてないほど強く日本政府批判が飛び出していると戸惑っている者も多い。中国政府も国民も熱くなっている。
 日本側は冷静になって事態を分析してみる必要がある。
 江沢民政権時代は経済成長重視が唱えられるだけでなく、反日教育が盛んに行われ、その成果が五年前の反日暴動となって現れた。胡錦濤政権は「和諧(調和)社会」を掲げて、貧富の格差是正、環境汚染対策、役人の汚職防止などの政策を実行してきた。外交においても日本との友好ムードを演出してきた。中国政府にはまだ日本の環境や省エネルギーの技術が必要だと映ったのである。
 つまり、概して言うと江沢民路線は鷹派で胡錦濤路線は鳩派と言えるかも知れない。これらの路線対立は胡錦濤政権下でも権力闘争の形で繰り返されたのである。そして、胡錦濤政権が残り二年になると、ポスト胡錦濤路線を巡る権力闘争が激化している可能性は高い。胡錦濤主席の後継者は習近平と言われているが、彼は鷹派の江沢民派である。
 共産党体制は役人の腐敗、国民の拝金主義などに見られるように支配力が緩んできている。古きよき人民に奉仕する共産党に戻るべきだという保守派は人民解放軍の発言力強化をバックに勢力を増大するとともに、経済成長至上主義の江沢民派と利害が一致していると考えられる。
 強い理念で国家をまとめるという仕組は強い統制力がなければ成就しない。中国は日本だけでなく、ベトナム、フィリピン、マレーシアとも領土問題を発生させても、強行姿勢を崩さないのはこのような背景があると考えられる。
 中国はすべてにおいて国内政治や権力闘争が優先される国家である。対外的な対抗姿勢は権力闘争に変化が訪れていることを反映している。中国はもう海外の技術や資金を頼りにしなくてもやっていけるのだという自信が彼らの心に宿っているのであろう。でも実際には海外優良企業との合弁なくして、強い経済は成り立たない状態にある。
2008年の統計では、中国企業総数の3%にも満たない外資企業が全国工業生産の28%、税収の22%、輸出額の56%を創り出し、就業人口の11%を雇用している。中国にとって、海外との協力は必要なのだ。日本に対して強行姿勢をとり続ければ、日本企業は工場をASEAN諸国などに移転することになろう。他の国も追随する可能性はある。そうなると、中国も困るはずである。権力闘争では、経済発展より国家の支配体制の強化や漢民族の誇りが上位にあるのだろう。
 中国は共産党一党支配体制であるが、案外体制の危機的状況にあるのかもしれない。それが今回の強硬姿勢に現れているような気がしてならない。
 一方、今回の中国の対応は日本人のナショナリズムを刺激した。中国が嫌いな日本人は過去最高に達している。その意味において、中国の対日戦略は大失敗だと言えよう。(2010年10月4日)

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