テロリズム安全神話が崩壊するとき


 原子力規制委員会の設置法案が国会を通った。
 東電福島事故で原発の「安全神話」が崩壊し、安全規制の一元化によって基準の見直しを行い、原子力の安全性を高めようというわけである。再出発だ。今度こそは失敗しないでほしい。しかし、冷静に考えると、次に勃発するのは事故ではなくテロリズムになるであろうことは容易に想像がつく。

 福島事故は稼働中の原発の外部交流電源と非常用電源の機能を喪失さえしてしまえば、原子炉は水素爆発に至り、大量の放射能を放出することを示した。テロリストは強固な格納容器ではなく、外部電源と非常用電源を物理的に破壊するか、サーバーテロで無効にすればいいことが分かった。
 または、人々の低レベル放射性物質への恐怖心を考えると、医療機関や大学から放射性廃棄物を盗み出して、街中にばら撒けば(あるいは、ばら撒いたと宣言すれば)、人々はパニックに陥るだろうと思われる。このような物質をダーティーボム(汚い爆弾)と呼んでいる。

 日本において、核テロリズムに対する懸念と議論が高まらないのが不思議で仕方がない。米国での同時多発テロ以降、IAEAは核セキュリティ対策を強化するとして、加盟国に対して勧告してきているが、日本政府は真剣に検討しているとは思えない。
 例えば、原子力施設で働く人々が内部で破壊活動を行うことを防ぐために、核物質や重要な機器に接する従業員の身元調査を行うように勧告されている。日本はプライバシー保護などの理由を上げて、この勧告に沿った対策を行っていない。先進国では日本だけだ。

 原発では何千人もの従業員が働いている。孫請けやひ孫請けの会社の社員もいることだろう。彼らには原発を渡り歩くものもいるが、放射線被ばく量の管理をきちんとやっているか覚束ない。本人や近親者の調査まで行うのが世界基準なのだが、日本は闇の世界に光を当てようとしていないように思われる。身元調査を行うと、地元の住民が嫌がるということもあるかもしれないが、安全の向上が第一であることは当然だ。ましてや仮に、プライバシー保護を優先して、身元調査を行わないと言うのであれば、新しい安全神話が生まれかねない。暫定的な代替措置として、原子炉内の作業は二人以上で行うという「二人ルール」を適用し、それでよしとしていては、情けないではないか。

 世界では武装勢力が原子力施設を襲撃する真のリスクが認識されているが、日本ではそのリスクは低いとして、民間事業者は武装した警備が認められていない。法的な措置が必要だ。このような問題を国会で議論すると、原子力施設はテロリストに狙われる恐れがあるために危険だという印象を地元民に与えてしまうことを心配しているのだろうか。そこにあるリスクには向き合わなければならない。ましてや、そのための措置はコスト高になると電気事業者が思っているのであれば、再び同じような問題を起こしてしまうであろう。

 日本の原子力施設でのテロリスト訓練は、関係者に事前に知らされた予定されたシナリオに沿って、情報伝達がうまくいくかどうかをチェックするだけにとどまっている。
 しかし、米国では予告もなしに、武装した勢力に原子力施設の弱点を襲撃させ、それを警備している武装隊が未然に防げるかどうか。もし、防げなかったとしたら、どうすれば予防できるかどうかを真剣に考えている。訓練のリアリティの次元がまるで違うのだ。

 日本のテレビ局は相も変わらず、海岸線に立地されている原発施設の空撮をお茶の間に垂れ流している。北朝鮮などの敵国に、ここが弱点ですよと教えてやっているようなものだ。悲劇的な福島事故を経験したにもかかわらず、マスメディアも国民も危機感がまったくないように思える。あのような多くの被災者を二度と生んではいけないとみんな口々に言うが、危ないものには蓋をするという体質は変わらない。

 希望は失いたくない。9月までに発足する原子力規制委員会は国民の生命と財産を守るという覚悟で業務に邁進してもらいたい。(2012年6月24日、寺岡伸章)

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